川下発想
「あなたがた不動産業界が、天童は土地が高くて子育てファミリー層が土地を買えないというから、芳賀ニュータウンも坪単価を抑え、小さな土地にしたが、その小さな土地の方が売れ残っているぞ・・・」新春賀詞交歓会会場で立ち話をしたとき、山本天童市長がおっしゃったお話でした。
市長が子育てファミリーの持ち家を促進する施策を実行してくださることは、市民にとっても不動産業界にとっても、建築業界にとってもありがたいことです。
ただ、その施策の基本を企画している
行政マンがマーケティングを理解していないのが残念です。
いくら土地を小さくしようが、いくら坪単価をライバルの東根市と同程度にしようが、これが
川上から発想のうちは、全く意味がないというわけです。
川下からの発想であれば、その
子育てファミリー層を研究するはずです。それも
お財布事情を。つまり、世帯年収がいくらぐらいなのかと言うことです。
民間の中小企業に勤めているのであれば、
30代前半の世帯収入は、せいぜい300万円前後です。
安全に住宅ローンが組めても
1,800万円~2,000万円でしょう。それが35年ローンで月々の支払いが家賃並みで、しかも
安全に返済していける限界です。
諸経費を差し引けば、実質家や土地に振り向け可能なのは、せいぜい
1,600万円~1,900万円。ローコスト系の家を建てるとすると建物で1,000万円~1,300万円。
残りは、500万円~900万円。これで土地を探さねばならないと言うことです。つまり、
平均土地価格は700万円という訳です。
要するに川下から発想すれば、
土地の大きさや坪単価などは無関係で、合計の土地価格が問題なのです。平均700万円クラスの土地を商品として提供できないのであれば、市長の言う芳賀ニュータウンの
「小さな土地」は売れ残って当然と言うことになります。
芳賀ニュータウンの「小さい土地」は800万円を越えています。言うなればどっちつかずの
中途半端な価格設定です。
今後3年間で
10%以上の所得アップが実現できるような安定した経済状況でなければ、なかなか難しいと言わざるを得ません。
弊社では9月から販売方法を変え、
全部コミコミで1,500万円という建物パック商品を発表しました。そして昨年12月にそれよりも割安な
全部コミコミで1,350万円という建物パック商品を発表しました。その結果、
客層がガラリと変わりました。今まで見たことのないお客様層が、お客様のほうからおいでになるようになりました。
1,350万円で含まれていないのは
土地代金だけです。大雑把に言えば、前述の平均700万円の土地代金を含めれば
2,050万円と、
目標予算額にぎりぎり近づきます。50万円程度のオーバーであれば遣り繰りは可能です。
このロジックを説明しましたが、なかなか理解してもらえないでしょう。なぜなら
行政マンは自分の年収をベースに物事を考えるクセがあるからです。
行政の企画担当にも早くこの川下からの発想に気が付いて欲しいですね。
「みはらしの丘」の二の舞にならぬようにと願っています。