2011年09月23日
一物五価
学生時代の経済学原論で、一物一価の法則というのが出てきました。
完全競争の世界では物の値段は全て同一の価格になるよう収斂されるというものです。原理としては理解できますが、現実社会ではありえない話です。これではスーパーマーケットや量販店、ディスカウンターなどの業種は存在そのものが否定されてしまいます。
それでは、土地はどうでしょうか。
土地は絶対的商品であり、世界中探しても決して二つと同じものがない貴重性と差別化されている世にも珍しい商品であり、最も原始的な商品でもあります。
ただしこの土地なる商品、東京だろうが山形だろうがニューヨークだろうが、元を正せば空気と同じくタダでした。持ち主は個人でも法人でも国家でもない「地球」でしたから・・・。
それがいつしか所有が認められるようになり、やり取りが出来るようになって対価がつくようになったわけです。
ですから、本来は相場なんてありません。持ち主の状況により対価は変動します。急いで処分しなければならない売り手は、ぐっと対価を下げますし、手放さなくともいい土地を望まれれば、言い値が対価となって高くなります。
ただ、これをやっていたのでは、公平かつ機能的に、そして安定的に税金を徴収することが出来なくなります。そこで、役所や国がその土地の価格の目安を決めて発表し、これが目安となって実勢取引価格が形成されるようになっています。これを業界では相場などと呼んでいます。
こういういくつもの価格があり、土地は一物五価と言われています。
その五種類の価格とは、時価(市場実勢価格)、基準地価、公示価格、路線価、固定資産税評価です。左から順に実際に売買されている取引価格あるいはそれに近い順での価格と言われます。
基準地価は、ほぼ時価に近いですし、基準地価と公示価格はほぼ同じレベルです。そして、公示価格は、路線価の1.25倍、また固定資産税価は路線価の約87%程度と言われます。
さて、21日に一斉に発表されたのがこの基準価格です。
山形県内の住宅地の基準価格は対前年マイナス4%で、天童は県内最下落に入りマイナス約5%となりました。
なかなか下げ止りません。新たに芳賀タウンが分譲開始されますが、これも市場価格に影響します。新しく便利な分譲地なのに、土地価格が近隣地区より割安なら、当然右習いになりますし、それを助長します。
自分の土地の現在値は売るつもりがないのであれば、知ることもないでしょうが、買ったときよりも安い価値のものを有していることは事実でしょう。12年前がピークでしたから、現在はそのときの68%の価格になっていると言うことです。
ただ、住宅ローンはすでに借りてしまっているので、金融機関にしてみれば担保相当の価値がなくなっているのかもしれませんが、よほどのことがない限り追加で担保をよこせとは言いません。
なぜなら始めから実勢価格で担保評価しているわけではないからです。それでも12年前に住宅ローンを借りた人は、すでに3割も土地価格が目減りしているわけですから、担保を取っている方でもそろそろヒヤヒヤものでしょう。
でも、いくら土地は元々タダだったとは言え、まっ逆さまにゼロ円に向かうわけではありません。
なぜなら、需要と供給のバランスで、土地は無尽蔵に生産できる商品ではないからです。さらに言うなら、自分の希望の条件に合う土地は、非常に少ないからです。
条件のいい土地から、オークションのように値段が下がってきたら、他者に買われる前に手を挙げる人が出てくるからです。だいたいにして、そんなに安くしか売れないのなら、売り急いでいるのでなければ、土地を売りに出す人も少なくなり、希少性が復活するというシーソーゲームのようなものです。
ただ、例外はあります。津波で壊滅的な打撃を受けた海岸近くの平坦地や原発で避難地区になっている地域の土地価格は、現状として価格をつけるのも困難と言わざるを得ません。
いずれにしても、山形の土地は向こう数年は買い時といって間違いないでしょう。でも、土地が安くなるのを待っている間も、無駄な家賃を、大家さんのために払い続けなければならないことをお忘れなく。